映像美術史
コンサート Vol.5
ジョルジョーネ
時の旅人
ジョルジョーネ
時の旅人
2022・11・27 in Tokyo
「ジョルジョーネ、時の旅人」コンサート
ダイジェスト・ムービー
「映像美術史」以外の曲目は予告なく変更される場合がございます。ご了承ください。
mica tanaca _piano & images
mica tanaca _piano
原曲はアレッサンドロ・マルチェッロ作曲のオーボエ協奏曲の二楽章「アダージョ」。この作品は弟のベネディッティ・マルチェッロの作品と誤って伝えられていた作品で1970年のイタリア映画「ヴェニスの愛」のクライマックスでオーボエ奏者の主人公により演奏され一躍有名になった。もっとも発表当時から非常に評価が高く大バッハもチェンバロ曲に編曲してる。本日はこのアダージョをもとにした「Concerto Adagio」を演奏します。[Y.Banno]
mica tanaca _piano
2.パストラル、6.夕暮れ(行進曲)、7.夜
コロナ禍の始まった頃、作曲したピアノのための作品集で全部で7曲から成る。ある一日を音楽で彩るための作品集。この頃、なぜかメロディの事をずっと考えていた。
今日はその中から「パストラル」「夕暮れ」「夜」の3曲を演奏します。[Y.Banno]
E-1027 < Music>
mica tanaca _piano
革新的なデザイナー、建築家のアイリーン・グレイの名前は歴史に埋もれつつあった。それはル・コルビュジエら周囲から、女性であるが故に受ける不当な扱い、敬意の欠如の積み重ねの結果であった。彼女がデザインした住宅、E.1027はル・コルビュジエの「近代建築の5原則」に敬意を払いつつも住宅は住むための機械ではなく、もっと個人や人にあわせたものであると訴え、デザインや家具の形で具体化した。彼女のデザインした住宅や家具は近年、ようやく正当な評価をうけることとなった。音楽も思考表現のための道具ではない。しかし、貴族や宗教の庇護にあったヨーロッパ音楽は、音楽家同士の技術の競争、自己顕示欲からその技術的側面を多いに尊重する運命にあった。つまりは形式と呼ぶ比較しやすい箱を用意し、その中で技術を競いあう意識のコロセウムにならざるを得なかったのだ。その危機を一番感じていたのも実は音楽家だった。近代、その競技場から離脱を試みようとするもののうまくはいかず、試行錯誤を繰り返し、現代においてようやくその糸口を見つけたように思う。しかしその突破口を開いたのは訓練を受けたヨーロッパクラッシックの音楽家ではなく、ストリートミュージシャンやヒップホップのトラックメイカーに代表されるポップアーティストだ。彼らの音楽は時代を切り取り、人に寄り添い、表現の歓び、幸せに奉仕している。つまりは芸術本来の目的を達成しているのだ。
話が横道にそれてしまった。音楽はE-1027で響く音楽を夢想し、あたかもその家の家具の一つになるべく努力した。グレイの闘いに敬意を表し、あらたに生まれる音楽がより人の歓びを生み出す事を祈りつつ彼女のデザインしたサイドテーブルにならい、E-1027<Music>とタイトルをつけた。曲は二つの部分からなり、第一部はその住宅から見える遠い海の色をイメージした牧歌的な音楽、切れ目なく演奏される第二部は限りなく謙虚に、限りなく控えめな響きの音楽である。[Y.Banno]
1901年に作曲された「水の戯れ」は、パリ・コンセルヴァトワールでの師でありガブリエル・フォーレに献呈されている。
楽譜には、アンリ・ド・レニエの詩「水の祭典」から引用して「水にくすぐられて微笑む河の神」をいうテキストが添えられている。
水の流れのしなやかさ、またその粒子が光の中で煌めく情景が目に浮かぶような浮遊感が美しい。この曲の「水」は河に由来するが、個人的にはラヴェルの「水」を聞くと、フランス留学中毎夏訪れた、彼の故郷の街サン・ジャン・ド・リュズの海の色を重い浮かべる。ラヴェルのとって水の揺らめきは、幼い頃から常に近くにあった原風景とも言えるのではないだろうか。[M.Tanaca]
Imtermezzo
ごく短い「間奏曲」というスタイルでかいた、次に演奏するメンデルスゾーンのプロローグ。ラヴェルからメンデルスゾーンへの橋渡し的な一曲。初演
Yukihiro Nomura
Yoshihiko Banno
mica tanaca
映像と音楽で紐解く西洋美術史最大の謎 《テンペスタ》
Yukihiro Nomura_scenario & images
Yoshihiko Banno_music
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ジョルジョーネの《テンペスタ》はヴェネツィア派の絵画のなかでもっとも有名な作品のひとつです。学生の頃、初めてヴェネツィアのアカデミア美術館でこの作品を見た時は、展示室の片隅のあまり目立たないところにひっそりと掛けられていたと記憶しています。数年前、久しぶりにアカデミア美術館を訪れた時は、たしか大きなホールの真ん中に飾られていて、ここ数十年の間に《テンペスタ》の評価がますます高まっていることを強く印象付けられました。
この作品が有名なのは、レオナルド・ダ・ヴィンチの《モナ・リザ》同様、ただ単に美しいというだけでなく、それが何を表しているのか分からない、謎の絵だからだと思います。もっとも、絵を見れば、田園風景の中に着衣の男が佇み、半裸の女が子どもを抱いて座っていることくらいはすぐに分かります。ただこれら登場人物がいったい誰であり、何をしているのか、そこでどんな物語が展開しているのかということになると、皆目分からないのです。このことが美術史研究者たちの関心を引き、これまで実に数多くの解釈が生み出されてきました。とくに1978年に刊行されたS・セッティスの『絵画の発明―ジョルジョーネ「嵐」解読』(原題:La《Tempesta》interpretata、邦訳2002年)は、この《テンペスタ》ただ1点だけの解釈に捧げられた研究書で、ここで提出された仮説が契機となって、数々の新しい解釈が矢継ぎ早に出されました。にもかかわらず、今なお定説をみていないというのが現状なのです。それどころか、この絵を純粋な風景画の先駆作と見なし、特別な主題はないと考える研究者さえいます。
わたしもかねてより《テンペスタ》の意味については興味を抱いていましたが、もちろんわたしにその謎が解けるなど、思いも寄らないことでした。ところが作品の画像をパソコンに取り込み、映像編集ソフトのタイムライン上で操作を行う「映像美術史」の方法を使うことで、これまで考えつかなかったような解釈に辿り着いたのです。それが今回初上映となる「ジョルジョーネ、時の旅人」なのです。
用語解説
◇ヴェネツィア派 おもに15世紀以降、北イタリアの港湾都市ヴェネツィアを中心に活躍した芸術家たちのこと。ゴシック様式とフランドル絵画、フィレンツェ絵画、ビザンティン美術などの要素を独自に総合した表現様式を生み出す。代表的な画家に、ヤコポ・ベッリーニとその息子ジョヴァンニ、ジェンティーレ・ベッリーニ、ジョルジョーネ、ティツィアーノ、ティントレット、ヴェロネーゼなどがいる。
◇ジョルジョーネ 本名ジョルジョ・バルバレッリ・ダ・カステルフランコ。1478年頃、北イタリアの小都市カステルフランコ・ヴェネトに生まれる。おそらくヴェネツィア派の画家ジョヴァンニ・ベッリーニの工房で修業し、レオナルド・ダ・ヴィンチの影響も受ける。1510年ペストに罹患し、32歳の若さで逝去する。
◇予型論 旧約聖書のうちに新約聖書の予型を見出すキリスト教の聖書解釈のこと。たとえば新約聖書におけるキリストの予型は、旧約聖書のアダム、モーセ、ヨナなどであり、聖母マリアの予型はエヴァ、サラ、ユーディットなどである
野村幸弘さんからネットで送られてきた映像を初めてみるとき、当たり前の話ではあるが無音である。そこには一切の音はなく、テキストと映し出される絵画の画像のみ。一度じっくりと映像を観る。そして画像を止め、記憶を頼りにピアノを弾きながら、思いついた音楽を書きとっていく。そして大まかに書き終わったら今度は映像と合わせて自分で演奏してみる。これが映像美術史における私の作曲工程であり、それ以上でもそれ以下でもない。おそらく「記憶をたよりに思いついた音楽を」のあたりが重要なのであろう。でもその瞬間はあまり覚えていない。これがわかれば毎日の仕事も苦労しなくてすむのだが。
音楽は以下の五つの部分に分かれている。
プレリュード(導入、五拍子のゆっくりしたテーマ)
レントラー(検証1 3部形式の少し速めのレントラー)
ソナタ断章(検証2 テーマの変奏と展開、その主題によるアヴェ・マリア)
コラール(検証3 高音のドローンと断片的な歌)
ポストリュード(エンディング、テーマ曲の回帰)
野村幸弘 Profile
坂野嘉彦 Profile
またマリンバ等マレット楽器や, 打楽器アンサンブルの作品を数多く発表しそれらの作品は「アトリエアルページュ出版」より出版されている.
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